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にっき

てんまたのひ

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てんまたのひ

8月11日、で天瞬の日、だそうですね!
すぐ忘れてしまうのとやってたらきりがないかなということで(ものぐさ)
語呂合わせ記念日にはてこでもなにもしねえと決めているので何も用意はないのですが、こういう語呂合わせで盛り上がってるのを見るのは好きです。
日本人の光るギャグセンス。

ふんどしの日だけはいつか祝ってみたいなぁと思っているのですが世はバレンタインの時にふんどしギャグをのせる勇気はなかった。


続きから、今のんびり書いてるてんまた書きかけ一本。
季節感無視で天馬中三、瞬木高一、になる前の春休みの話。オチが見えない。
天馬中学三年生、瞬木高校一年生 になる直前の春休みの話。
恋愛色は限りなく薄め。


『おはようございます、朝のニュースです』
リビングに置かれたテレビの中でニュースキャスターが桜の開花予想を口にしていた。もうすぐ春が来る。
台所で朝食の後片付けをしていた秋がひょいと顔をのぞかせた。
手を拭いているタオルは、天馬が昨年の母の日に贈ったものだ。白地に花の刺繍が入った、決して高くはないそれを、秋はまるで宝物の様に扱ってくれている。頻繁に使っているのを目にするのに目立ったほつれや汚れが見当たらないのがその証拠だ。大事にされているのだと、実感する度くすぐったい。
 今年の母の日は何をあげようか。ふと考えて気が沈む。
もうその時には天馬は三年生だ。頼れる先輩はもういない。また来年、もない。何をやってもこれで最後の一年だ。胸中に暗雲が立ち込める。
秋はそんな内心に気づかず、天馬とテレビを交互に見て微笑んだ。
「来週にはこの辺りでも咲くかもしれないわね」
「……そうだね」
まさか咲かない方がいいなんて言うわけにもいかない。笑顔になりきれていない天馬を見て秋も眉を顰めたが、すぐにいつもの穏やかな表情を浮かべ、今日はどこに行くんだっけと小首を傾げた。秋はすごいと思う瞬間だ。
「瞬木とちょっと遊びに。何をするかはまだ決めてないけど」
「前もそんなこと言って結局サッカーして帰ってきてたわよね」
「そうだっけ」
「そうよ。もう、天馬ったら忘れちゃったの?」
忘れるはずもない。もう半年も前の夏のことである。それから一度も瞬木には会っていなかった。受験生だった瞬木はスポーツ推薦を狙っていた。しかし万が一のためにと勉強も欠かしていなかったから、天馬と会う時間はなかった。あの時は受験生は大変だな、くらいに思っていたが、実際自分がそのスタートに立つとプレッシャーが重くのしかかる。あの時笑ってサッカーをしていた瞬木の精神の強さを改めて思った。
「夜遅くまで遊んでたから心配してたら二人して泥だらけで帰ってくるんだもの、びっくりしちゃった。しかも突然今日泊っても良いかなんて言い出すんだもん」
「あはは……、ごめんごめん」
「ほんとよーもう。今日は泊るんだったら早めに連絡してきてね、ご馳走用意するから」
「うん、ありがとう。じゃぁオレ遅れちゃうからもう行くね」
 逃げるように駆け出した背中を秋が呼び止める。
「天馬、マフラー外していったら? 今日暖かいからいらないと思うわ」
「うーん……。いいや、暑かったら外すよ」
「そう? でもマフラーだけじゃなくてその上着もちょっと暑いと思うわ」
 いつも母親のように優しく見守ってくれる双眸が今日はやけに疎ましい。天馬は居心地の悪さを誤魔化すように右肩にかけたバックを持ち直した。
「大丈夫だって。脱いだり着たりくらい自分でできるから。行ってきまーす!」
今度こそ逃げ出した天馬を見つめる秋の瞳が心配そうだったのを天馬は知らない。


冬独特の張り付くような風が天馬の頬を撫でた。冷たさの中に、微かな温かみが混ざっている。春が近づいているのだと言われているようで、避けるように電車に飛び乗った。
『駆け込み乗車はご遠慮ください』
「す、すみません!」
 思わずアナウンスに謝ると周りから小さく笑い声が起こった。照れ笑いを浮かべる他ない。
笑いの波がようやく引いても椅子に座る気にはなれなれず、扉に背中を預ける。
一度目のラッシュを終えた平日の車内は、天馬と同じく春休み中だろう学生たちのおかげでそれなりに混雑している。皆どこか楽しそうなのは休みだからだろうか。それとももうすぐ来る新生活に心を躍らせているからか。単に今日の楽しみに浮かれているだけかもしれない。
この前の卒業式がね。春からはお前がキャプテンなんだから。入学式楽しみだね。
行き交う言葉を聞いているのが耐えきれない。急かされるように窓の外へと視線を逃す。ゆったりと流れていく景色の中に薄桃色が見え、心臓が大きく跳ねる。どうして、咲くのはまだだと言っていたのに。よく見ればそれは冬の終わりに駆け足に咲く花で、桜ではなかったのだが、天馬を憂鬱な気分にさせるには十分だった。目を閉じてただ電車が走る鼓動の音に耳を傾けた。何だか今日は逃げてばっかりだ。
ため息をつく。
あぁ、冬が去らなければいいのに。


改札を抜けると道が大きく開ける。
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